女性社労士の気になるニュース

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LGBTへ、広がる行政の支援

先週8月23日、こんなニュースが報じられました。

www.chunichi.co.jp

 

愛知県内の行政としては初となるLGBTに関する宣言を豊明市が出したということと、今後の支援内容として公的機関や相談窓口を紹介したり、市民向けの講演会などを予定している旨が報じられています。

豊明市の宣言自体はとても短いので全文引用します。

LGBTともに生きる宣言

豊明市は、すべての市民の人権を尊重し、多様な生き方を互いに認め合い、誰もがこころ豊かに暮らせるまちをめざし、LGBT性的少数者)への配慮と理解の浸透に努めることをここに宣言します。

 

行政のLGBT支援の宣言の動きに関して、最も早かったのが大阪です。

大阪市淀川区は2016年9月に全国で初めて行政として「LGBT支援宣言」を発表しました。淀川区ではこの宣言を受けて、LGBTに関する電話相談や講演会、パネル展などの啓蒙活動を行っています。特に評価できるのはこの電話相談で、第1〜4水曜17時から22時までと、日時は限定的ですが夜間の時間帯まで対応しているところです。

淀川区では専用のHPをたちあげ、リーフレットなどをダウンロードできるようデータを公開しています。

niji-yodogawa.jimdo.com

 

また、具体的な動きという点では和歌山県橋本市の取り組みも目を見張るものがあります。市のHPにはLGBTのことを特記しておらず、関連する情報を探すのは若干のコツが必要ですが、それは橋本市にとってはことさらに強調する必要がないせいかもしれません。講演会や啓蒙DVDの上演などを行うほか、平成27年には「橋本市男女共同参画推進条例」のなかで具体的に下記のように定めています。

 第三条 (2) 性別による固定的役割分担意識に基づく社会における制度又は慣行が、男女の社会における活動の自由な選択に対して影響を及ぼすことのないよう配慮されること。

第八条 何人も、家庭、地域、職場、学校その他の社会のあらゆる分野において、性別に起因する差別的取扱い並びに性的指向及び性自認による差別を行ってはならない。

 

ほか、例えば東京都渋谷区、同・世田谷区、兵庫県宝塚市三重県伊賀市沖縄県那覇市、北海道札幌市などがパートナーシップに関する要綱を出して支援にあたっています。この同性パートナーシップ制度は法的影響力のあるものではありませんが、例えば同性カップルでの不動産入居、緊急時の連絡先、病院入院時の対応等に効力を与えられるのではないかと期待されています。

 

当事者団体、支援団体はたくさんありますが、最も影響力があるのはやはりこうした自治体の取り組みでしょう。

今回の豊明市の宣言を受け、今後どのような施策が行われるか楽しみです。

女性の働きにくさについて/本当の意味でのダイバーシティ

現在、安倍内閣が強く推し進めようとしている女性の活躍推進。
これは出産・子育て、介護等で就労が途切れがちな女性を政策の面からもバックアップし、少子高齢社会における貴重な労働力として活用し、当事者である女性本人にも働き甲斐を提供することによって労働生産性を高めていこう……という思惑によるものです。
実際、平成27年度の雇均法基本調査によれば、係長相当職以上の女性管理職を有する企業割合は 65.9%まで達しており、企業と女性双方の努力のあとがうかがえます。

しかし労働力人口の低下を補うためには、女性だけが活躍しても追いつかない。

したがって身体的・環境的事情でフルタイム労働ができない、あるいは働ける時間帯や働き方そのものに配慮が必要されるような方々に対しても企業が門戸を開く事例が少しずつ増えてきました。また、ダイバーシティを視野にいれたキャリアコース、働き方が徐々に浸透してきたように思います。

 

この流れの中で、働きやすい環境が整いだしてきたとされるのが、出産・子育て中のキャリア総合職女性です。
※ノンキャリアだと総合職採用でも長期休暇取得後に短時間勤務に強制変更&一般職変更……というコースや、そもそもパートや派遣だったりすると契約更新なし、というのもよくある話。このテーマについては後日改めて取り上げたいと思います。

法律的には産前産後休暇が保証され、その後は育休取得か復帰して時短勤務・残業拒否なども選択可能。
前述の調査によれば、女性の育休取得率は前年度よりやや下がったものの81.5%を超え、その後も92.8%の方が実際に復職。経営者の方向けに育休の取得を支援する助成金も登場しており、キャリア総合職女性たちは過去と比較すれば格段に育休がとりやすくなっている状況が伺えます。

しかし、ここでよく問題となるのが、育休取得中、そしてその後の同女性社員の扱いです。具体的事例を一つ挙げてみましょう。登場するのは三人の女性です。


Aさん…大手企業総合職。入職5年目で結婚、翌6年目で妊娠。産休中で育休取得後復帰予定。
Bさん…Aさんの同期。総合職。入職4年目で結婚しており、現在不妊治療中。
Cさん…Aさんの産休・育休中の補充のために有期雇用されるが、更新については不透明。

Aさんが休業中の穴を埋めるため、職場にはCさんが有期契約社員として雇用されました。
しかし、Aさんが担当していた業務の一部のみがCさんの担当ということに。任されたのはプレゼン用のスライド作成やチームの補助業務ばかりで、実際に営業先へ赴くなど仕事の根幹にかかわる部分には携わることができません。しかも、いつまでここで働けるかもわからないため、なんとなくほかの社員からもよそよそしい扱い。
毎日何に使うかも分からない資料を作っているけれど、どうも本気で取り組むことができません。契約が切れた時のために、昼休みは転職先を探して求人ばかり見ています。

Aさんはいくつもの営業先を抱えており、進行中のプロジェクトもありました。それらの部分は、Bさんが引き受けることになりました。もちろんそもそもBさんが抱えていた仕事が減るわけではなく、Bさんは残業が続く日々。そんな毎日にBさんはもやもやと割り切れない気持ちでした。
Bさんは子供を望んでおり、月に2回不妊治療のため定時退社をして病院に通っています。しかし、先日医師から体外受精のステップに進むことをを考えるよう告げられています。体外受精となれば、月に10日ほど連続して通院することが必要になりますが、周囲に治療中であることを告げていない以上、残業を断ることができないのです。

Aさんも不安な気持ちで毎日を過ごしています。授かった子供はかわいいものの、保育園はどこも満員。キャンセル待ちに登録したものの、育休明けにスムーズに入園できるかは分かりません。はいれたとしても、子どもが熱を出せば仕事を休まなければなりません。子どもを持つ女性たちが大きなプロジェクトから外れていくこと、人によっては時短勤務になっていく姿を、Aさんはこれまで後輩の立場で見てきました。仕事にやりがいを感じていたAさんは、自分が休んでいる間にも結果を出しているであろうBさんを少しうらやましく感じるのです。
もし、保育園に入れなかったら、仕事を辞めなくてはならないかもしれない。
復職の時期を上司に報告しなければはならないと思いつつ、まだ現状を伝えきれていないAさんなのでした。

 

女性だけに絞っても、上記のような問題はどこの企業にも多かれ少なかれ見られる状況です。この例では、この三人の女性のうち幸せな人は一人もおりません。Aさんは復職できるか、できたとしても今まで同様に働けるかということに不安を感じ、Bさんは仕事のしわ寄せが私生活にも及んで不公平感を感じています。Cさんは仕事そのものへやりがいを見いだせていない。
これが、働きやすいとされている女性の仕事の実態です。キャリア総合職女性であるAさん、Bさんに限っても(過去と比べて相対的にはよくなっているとはいえ)働きやすいとは決して言えないでしょう。
こうした状況を打破するには、どうしたらよいのか。

本当の意味でのダイバーシティとは、この三人がそれぞれ働きやすくなる仕組みがあってこそ実現するものと私は考えます。
企業によってその仕組みの作り方は様々でしょうが、だれもが安心して働ける状況を作り出すことが経営者の方には求められていると思います。

そもそもLGBTとは?

最近、何かと話題の単語である“LGBT”。

これは性的少数者を意味する言葉で、それぞれ次の言葉の頭文字をつなげたものです。

L=レズビアン(女性同性愛者)

G=ゲイ(男性同性愛者)

B=バイセクシュアル(両性愛者)

T=トランスジェンダー(戸籍上の性別と自分で認識する性別が不一致である状態)

 

しかし、上記の言葉それぞれをとってみても、実際は簡単に表現できるものではありません。ですから、一口にLGBT問題として報道やトピックに取り上げられると、当事者の方は複雑な心境になることが多いようです。

 

おそらく、この中で最も誤解されることが多く、また周囲も配慮を要するのはトランスジェンダーの方でしょう。

このカテゴリーで呼ばれる方々のなかには、見た目の性別が性自認している性(自分で自分のことを男性/女性と考えている性別。無性と考える方もいます)と一致している場合もあれば、どうしようもなく一致せずそのために苦しんでいる方もいます。

自分では男性だと思っているのに、制服のスカートを履かされる苦痛、成長とともに胸が膨らんでくる苦痛、女子トイレを使わなければならない苦痛……。

こういったエピソードは、FtMトランスジェンダーのなかでも戸籍上性別が女性、性自認が男性)のお客様と話していると必ず登場する鉄板の話題です。

 

もちろん、通常の生活でもLGBT当事者の方は様々な困難を抱えていますが、就労にあたっても特有の困難さに直面することがあります。

 

レズビアン、ゲイの方がよく口にするのは長時間労働と結婚ハラスメントです。

通常、入職する際には自分の性的志向をわざわざ申告しません。日本においては同性同士の婚姻はいまだ認められていませんので、彼らは配偶者に比するパートナーがいたとしても、会社上ではよくて内縁の恋人持ち、あるいは独身扱いになります。

したがって、妻帯者や子持ちならしれっと帰れるような場合でも「独身なんだから」の言葉のもとに残業を要求されたりする場合があるのです。

また、育休などでチームに欠員が出た場合、同様の理由でしわ寄せを受けやすいという話も聞きます。

しかも、その上に「〇〇ちゃんも早く結婚しなよ~。やっぱり女は家庭を持たないと」などと結婚していないことを欠損のごとく心配顔でいう上司も出てくる始末。

男性の場合だと笑いながら「ゲイなんじゃね?」と面と向かって尋ねられることもあるといいます。別にその男性がゲイだからなんだという話ですが、わざわざそんなデリケートなことを公衆の面前で訪ねてくる無神経さがなぜかまかり通っている、現在。

 

同様の話はバイセクシュアルの方からもよく耳にします。

あるバイセクシュアルの女性は恋愛対象が男女両方であることをオープンにしていたそうですが、社員旅行で部屋割りがなぜか一人だけ個室。大浴場での入浴も控えてほしいと幹事から通告されたそうです。

「たぶん襲われるって思ったんでしょうね。でも、私だって好みがあるし、だれでもいいわけじゃない。その辺が全然理解されない」

まったくもって失礼な話ですが、こういう誤解もあるのだそうです。

 

トランスジェンダーの方の場合は、上記とはまた別種の問題があります。

例えば更衣室、トイレなどの利用をどうするか。

戸籍上男性で、性自認が女性がいたとして、

1)見た目は女性に見え、手術も完了して身体の状態は女性(戸籍のみ男性)である場合

2)見た目は女性に見え、現在ホルモン治療中で身体の状態は両性的な場合

3)見た目は女性に見えるが身体は男性のままである場合

4)見た目も女性に見えず身体も男性のままである場合

この4つのケースで、どこまでを「女性」として扱うか。おそらく、4つ目は女装として扱われてしまうことがほとんどでしょう。しかし、1~3の場合は見た目としては女性なので、線引きが難しいのです。

また、上記2のケースのようにホルモン治療を行っている場合、頻繁に医療機関の受診が必要であったり、投薬・注射の影響で体調に影響が出ることもあります。

仕事をしながら治療に通うような癌や糖尿病などのケースと同様、こちらへも本来は配慮が必要でしょう。

 

結局は会社、経営者の方の判断となりますが、同時にトランスジェンダーの方だけでなく社員の方への配慮も必要となるデリケートな問題に発展するケースも多いのです。

 

自分で自分の性的対象や性自認を告白することをカムアウトと呼びますが、その範囲や時期を決めるのもあくまで本人であることが原則です。

この原則を破り、了承を得ずに第三者が公表をすることをアウティングと呼びますが、2016年にはそれを理由とした悲しい事件がありました。

一人一人がLGBT問題への理解を深めるとともに、問題が起きない仕組みを作る方法を考えることも必要なのではないでしょうか。

 

 

 

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はじめまして!

愛知県豊橋市の社労士、村井真子です。

社会保険労務士とキャリアコンサルタントをしております。

 

なかなかなじみの薄い法律用語や、今話題になっている労働問題についてわかりやすくお伝えできたらと思います。

お時間のある方はどうぞよろしくお願いいたします!