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女性の働きにくさについて/本当の意味でのダイバーシティ

現在、安倍内閣が強く推し進めようとしている女性の活躍推進。
これは出産・子育て、介護等で就労が途切れがちな女性を政策の面からもバックアップし、少子高齢社会における貴重な労働力として活用し、当事者である女性本人にも働き甲斐を提供することによって労働生産性を高めていこう……という思惑によるものです。
実際、平成27年度の雇均法基本調査によれば、係長相当職以上の女性管理職を有する企業割合は 65.9%まで達しており、企業と女性双方の努力のあとがうかがえます。

しかし労働力人口の低下を補うためには、女性だけが活躍しても追いつかない。

したがって身体的・環境的事情でフルタイム労働ができない、あるいは働ける時間帯や働き方そのものに配慮が必要されるような方々に対しても企業が門戸を開く事例が少しずつ増えてきました。また、ダイバーシティを視野にいれたキャリアコース、働き方が徐々に浸透してきたように思います。

 

この流れの中で、働きやすい環境が整いだしてきたとされるのが、出産・子育て中のキャリア総合職女性です。
※ノンキャリアだと総合職採用でも長期休暇取得後に短時間勤務に強制変更&一般職変更……というコースや、そもそもパートや派遣だったりすると契約更新なし、というのもよくある話。このテーマについては後日改めて取り上げたいと思います。

法律的には産前産後休暇が保証され、その後は育休取得か復帰して時短勤務・残業拒否なども選択可能。
前述の調査によれば、女性の育休取得率は前年度よりやや下がったものの81.5%を超え、その後も92.8%の方が実際に復職。経営者の方向けに育休の取得を支援する助成金も登場しており、キャリア総合職女性たちは過去と比較すれば格段に育休がとりやすくなっている状況が伺えます。

しかし、ここでよく問題となるのが、育休取得中、そしてその後の同女性社員の扱いです。具体的事例を一つ挙げてみましょう。登場するのは三人の女性です。


Aさん…大手企業総合職。入職5年目で結婚、翌6年目で妊娠。産休中で育休取得後復帰予定。
Bさん…Aさんの同期。総合職。入職4年目で結婚しており、現在不妊治療中。
Cさん…Aさんの産休・育休中の補充のために有期雇用されるが、更新については不透明。

Aさんが休業中の穴を埋めるため、職場にはCさんが有期契約社員として雇用されました。
しかし、Aさんが担当していた業務の一部のみがCさんの担当ということに。任されたのはプレゼン用のスライド作成やチームの補助業務ばかりで、実際に営業先へ赴くなど仕事の根幹にかかわる部分には携わることができません。しかも、いつまでここで働けるかもわからないため、なんとなくほかの社員からもよそよそしい扱い。
毎日何に使うかも分からない資料を作っているけれど、どうも本気で取り組むことができません。契約が切れた時のために、昼休みは転職先を探して求人ばかり見ています。

Aさんはいくつもの営業先を抱えており、進行中のプロジェクトもありました。それらの部分は、Bさんが引き受けることになりました。もちろんそもそもBさんが抱えていた仕事が減るわけではなく、Bさんは残業が続く日々。そんな毎日にBさんはもやもやと割り切れない気持ちでした。
Bさんは子供を望んでおり、月に2回不妊治療のため定時退社をして病院に通っています。しかし、先日医師から体外受精のステップに進むことをを考えるよう告げられています。体外受精となれば、月に10日ほど連続して通院することが必要になりますが、周囲に治療中であることを告げていない以上、残業を断ることができないのです。

Aさんも不安な気持ちで毎日を過ごしています。授かった子供はかわいいものの、保育園はどこも満員。キャンセル待ちに登録したものの、育休明けにスムーズに入園できるかは分かりません。はいれたとしても、子どもが熱を出せば仕事を休まなければなりません。子どもを持つ女性たちが大きなプロジェクトから外れていくこと、人によっては時短勤務になっていく姿を、Aさんはこれまで後輩の立場で見てきました。仕事にやりがいを感じていたAさんは、自分が休んでいる間にも結果を出しているであろうBさんを少しうらやましく感じるのです。
もし、保育園に入れなかったら、仕事を辞めなくてはならないかもしれない。
復職の時期を上司に報告しなければはならないと思いつつ、まだ現状を伝えきれていないAさんなのでした。

 

女性だけに絞っても、上記のような問題はどこの企業にも多かれ少なかれ見られる状況です。この例では、この三人の女性のうち幸せな人は一人もおりません。Aさんは復職できるか、できたとしても今まで同様に働けるかということに不安を感じ、Bさんは仕事のしわ寄せが私生活にも及んで不公平感を感じています。Cさんは仕事そのものへやりがいを見いだせていない。
これが、働きやすいとされている女性の仕事の実態です。キャリア総合職女性であるAさん、Bさんに限っても(過去と比べて相対的にはよくなっているとはいえ)働きやすいとは決して言えないでしょう。
こうした状況を打破するには、どうしたらよいのか。

本当の意味でのダイバーシティとは、この三人がそれぞれ働きやすくなる仕組みがあってこそ実現するものと私は考えます。
企業によってその仕組みの作り方は様々でしょうが、だれもが安心して働ける状況を作り出すことが経営者の方には求められていると思います。